🌸点字デジタルアートとは🌸

点字デジタルアート
理念
点字デジタルアートは、視覚障害者と晴眼者、そしてAIと専門家が協働し、多様な感覚と解釈を通して新たな価値を創造する総合芸術であり、かつ誰もが共に感動を分かち合えるインクルーシブな社会を創造することです。
概要
点字デジタルアートは、既存の点字アートが「鑑賞」に重きを置くのに対し、視覚障害者の制作過程への主体的な参加を重視します。
制作プロセス(パレット・ボイス Palette Voice)
- 視覚障害者の制作意図:視覚障害者が自身の表現したいテーマやイメージを明確にします。
- プロンプト作成と分析: 画家やシステムエンジニアが、視覚障害者の制作意図を基に、AIが理解できるMultimodal Prompt Formatを作成します。この際、対話を通じて制作意図を具体的かつ心理的にも深く分析します。
- AIによる画像生成と修正: 分析内容を基に画像生成AIが像を生成し、このプロセスの最も重要な作業である、画家やシステムエンジニアが視覚障害者(アーティスト)の意向を反映しながら修正を行います。(センス・ビルディング Sense Building )
- 作品の出力と展示: 最終的な作品はモニター等や点字プリンターに出力されます。晴眼者は生成された画像と点字、音声で、視覚障害者は音声解説や点図で作品を鑑賞します。
特徴と意義
点字デジタルアートの最大の特徴は、視覚障害者の主体性、AI技術の活用、専門家との共創による総合芸術である点です。
生成された画像、点図、音声を組み合わせることで、視覚障害者と晴眼者の両方が楽しめる多様な表現形式を実現します。
これは、単にAI技術を福祉に応用するだけでなく、そこから生まれる新たな「意味」を追求する試みです。
点字デジタルアートは、ルネサンス時代の工房や浮世絵版画の分業制に類似しつつも、AI技術の導入によるより複雑な表現を可能にしています。
人間とAIの協働
点字デジタルアートは、AIの力を借りながらも、人間の知恵、経験、そして何よりも芸術性が不可欠な領域です。
AIは、大量のデータからパターン認識や生成を行い、制作作業を効率化し、人間には思いつかないような新しい表現を提案する強力なツールとなり得ます。
しかし、AIには以下のような限界があります。
- 意図と感情の理解: 作者の意図や感情、経験といった複雑な要素を理解し表現することは困難。
- 創造性と独創性: 真に新しいものを生み出す創造性や独創性は、現時点のAIには難しいと考えられます。
- 触覚的な理解: 触覚を通じて理解される点字の要素や、人間の触覚経験を完全に模倣することは困難。
- 文脈と意味の解釈: アートが持つ文化、歴史、社会的な文脈を理解し、作品に深みを与えることは容易ではありません。
- 個性と作家性: 独自の視点や表現方法を持つ作家性を確立することは困難です。
このため、点字デジタルアートにおいて人間の介在は不可欠です。作品の根幹となるコンセプトや意図の決定、人生経験や文化的な背景の反映、美的感覚と構成、触覚への配慮、試行錯誤と修正、そして作品に魂と感情を注入する役割は、人間の知恵と感性によってのみ果たされます。
AIはあくまで人間の創造性を拡張する道具であり、人間の介在なしに真に意味のある点字デジタルアートは成立しないという考え方が成り立ちます。
ある記者の問い
ある記者の、点字デジタルアートの本質に対し「視覚障害者の評価にすぎないのか」という問いに、下記のようにお答えいたしました。
〇視覚芸術から「多感覚芸術」へ
従来の「アート」は視覚に大きく依存していましたが、点字デジタルアートは触覚、聴覚、そして視覚(晴眼者向け)を統合した「マルチモーダル(多感覚)な芸術」として提案しております。
これは、単に視覚情報の不足を補うだけでなく、視覚以外の感覚を最大限引き出し融合させることで、これまでのアートでは到達しえなかった新たな領域を創造し、より「多感覚芸術」として成り立つと考えます。
〇AIと画家による「共創」の役割
AIは指示を客観的に形にするツールですが、人間の複雑な記憶や感情を再現できるわけではありません。
ここで画家の役割は、視覚障害のあるアーティストの「内なるイメージや制作意図」を、AIが生成した「デジタル情報」を介して、より豊かで多様な感覚で「翻訳」し、「拡張」することです。
画家は、言葉の裏にある多層的な意味合いを汲み取り、AIに適切な指示を与えたり、生成された画像を、視覚障害のあるアーティストと会話をくり返し、承認を得ながら、感性豊かな表現へと創り上げていきます。
これは、視覚障害のあるアーティストの「芸術意図の尊重」と「表現の最大化」を可能にします。
〇「視覚障害者の評価」ではなく「体験者の総合的評価」
点字デジタルアートは、視覚障害者だけでなく、晴眼者を含む多様な人々がそれぞれの感覚で制作し鑑賞できることを目指しています。
したがって、その評価は、単に「視覚障害者がどう感じるか」だけでなく、その表現が「晴眼者にとっても新たな視覚的・多感覚的体験をもたらすか」という点も含みます。
芸術の本質は、鑑賞者の感性や思考に働きかけ、新たな気づきや感動を与えることにあります。点字デジタルアートは、多様なチャネルを通じてアーティストの内なる世界を提示することで、「発見」と「共感」を生み出し、それがそのアートの価値を測る普遍的な評価軸となり得ると考えます。
結論
一人ひとりのイメージを丁寧に理解し、共感を生み出す芸術
点字デジタルアートの制作においては、視覚障害のあるアーティスト一人ひとりのイメージや制作意図を丁寧に理解し、その内なる世界を尊重し表現を目指すことが極めて重要です。
視覚障害の時期、程度、個人の経験、記憶、そして主要な感覚によって、イメージのあり方は大きく異なるため、個別の対話とアプローチが不可欠となります。
点字デジタルアートは、単に視覚障害者のためのアートではなく、「あらゆる感覚を持つ人々が、それぞれの感覚を通じて、これまで体験したことのないアートの地平を切り開く」ことを目指しています。
画家の役割は、視覚障害のあるアーティストの「魂の声」を、AIというツールを介して、最大限に豊かで多様な感覚で表現できる形へと「翻訳」し「拡張」することです。
そして、その最終的な評価は、「視覚障害のあるアーティストの意図が、多様な鑑賞者の感性にどのように響き、新たな感動と共感を生み出すか」にあると考えます。
これは、「単なる視覚障害者の表現の評価ではなく、全人類の感覚の可能性を広げ、共感を生み出す、真にインクルーシブな芸術としての評価」を目指すものと考えています。
点字デジタルアートは、解釈の創造性を核とし、人間とAIが共創することで、既存の芸術の枠組みを超え、多様な人々が互いの世界を理解し、共感し合うための新たな芸術表現として、その意義を確立していけると強く確信しています。
点字デジタルアート
最終的な作品はモニター等や点字プリンターに出力されます。晴眼者は生成された画像と点字、音声で、視覚障害者は音声解説や点図で作品を鑑賞します。


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